seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■かまってください


この暗闇は、ロウソクの灯火が緩やかに燃えゆく音すらも聞こえるほど、静かで神聖な場所だった。それは当然の事であり、厳かな場所でのご法度を無意識に理解し侵す事は無い……それが我々なのだと思っていた。
しかし、どんな集団にもイレギュラーな存在が紛れ込むものだ。

「うるせぇんだよクソッ! 勝手に自分の考え押し付けやがってざけんじゃねようざってぇ!」

通路を歩いている段階で、耳を疑うような暴言と怒鳴り声が耳に入る……騒がしい。この不釣合いな罵声に、闇も動揺しているように思えた。

「てめぇの言い成りになんかなるかよバーカ!」

その声のボリュームが上がった。ドアを開けた新人は、部屋の中に最後の暴言を投げ入れると、派手な音を立ててドアを閉めていた。舌打ちしたその男は回れ右をするとこちらの姿に気づいたようだ。目を細めてこちらを警戒している。

「何だよ文句あるんのか?」
「……何も言っていないだろう」

恐らく部屋の中でこの男に暴言を浴びせられていただろう人物は、かつてこの男を「子犬」と比喩していた……良くわかる気がする。しかも捻くれた子犬だ。自分が怒られて当然の事をしている自覚があるので、他人を警戒し威嚇する。何も言っていないのに沈黙に耐えられず唸る、吠える。

「ハッ! どうせ腹の底ではメンドクサイ奴が来たと思ってんだろ?」

口元にだけ笑みを浮かべ言った。睨みつけるその瞳は全てを警戒しているようで、怯えているものを隠そうとしているようにも見える。

「そうだな。似たようなことを思っている」
「…………ふん、やっぱりな……」

肯定してやったというのにそっぽを向き、少し寂しそうな、いじけたような表情を見せた。捻くれているのに、わかりやすい……ダークシグナーとてまだ子供、か。

「好かれたいと思うのならばその態度を改めろ。そのようなやり方ではいずれお前の恐れる事態になるぞ」

横を通り抜ける際、軽く新人の頭に軽く触れた。しばし呆然としていたのか、背後で暴言を聞いたのは数歩進んでからだった。

「だ、誰が好かれたいなんて思うんだよ! くたばれ勘違い野郎!」

吠える子犬を振り返らずに、部屋の中へと入り、後ろ手でドアを閉めた。
まったく、厄介な新人が入ってきたものだ……面白い。




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