seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■脳裏を過ぎる不吉な比喩は封じる


新しいカードを入手したので、デッキの見直しをしようとカードに目をやっていると、視界の端に一瞬理解出来ないものが映った。室内にいるのに、何らかの浮遊物が視界に入れば、正体が室内にあってもおかしくないものであれ気になってしまうものだが、それは圧倒的に室内で遭遇するには不釣合いと言うかなんと言うか……

「鬼柳」
「んー?」
「外でやれ」

宙を舞う複数のソレが漂ってくる方向を見れば鬼柳がいた。左手に飲料のような形をした容器を持ち、右手にストローのような細い筒状の物を手にしている。しかし左手の容器に入っているだろう液体をストローで吸い上げる事は無く、むしろストローを咥えた鬼柳は息を吹き込んでいた。ストローの反対側からぽこぽこと飛び出す透明の球体。光を乱反射させて表面を薄く虹色へ変化させていた……そう、シャボン玉だ。随分久しぶりに見た気がする。室内で見かけたのは初めてかもしれない。

「外なんて誰が見てるかわからねぇだろー。ガキみたいだって指差して笑われるかもしれないぜ」

言い終わると鬼柳はゆっくりとストローに息を吹き込む。頃合を見計らってストローから離すと、大きなシャボン玉が緩やかに飛んだ。シャボン玉を目で追う。空気抵抗と重力の影響に逆らわず、下降を続け、床に触れると消え去った。
視線を鬼柳に戻すと、次のシャボン玉を作っている最中だった。確かに最強チームのリーダーがやる行動ではない。

「人の目ならここにあるぞ。オレはお前を子供のようだと馬鹿にするかもしれない」

作り終わったシャボン玉から目を離さずに、ストローを液体につける鬼柳は言った。

「いいんだよ、お前は」

再び鬼柳は吹き込む息の速度を強めて小さなシャボン玉を複数宙へと生み出した。
上昇するもの、下降するもの多種多様。しかしその命はどれも短い。

「……オレ達になら子供と思われてもいいのか」

シャボン玉を四方に生み出し、それに囲まれている鬼柳を見た。鬼柳はその言葉には手の動きを止め、少し考えるように天を仰いだ。そして考え終わると微笑をこちらに向ける。

「これに関してはお前達っつーか……お前になら、だな」
「…………それは誇って良い事か?」

再び鬼柳のモーションはシャボン玉を作成するそれに戻った。

「相当」
「……覚えておこう」

こちらまで浮遊してきたシャボン玉に手を延ばす。先ほどまでしっかりとしたカタチをしていたのというのに、触れた瞬間破裂した。




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