seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■口約束


自分の知らない所で起こっている事などは知る由もない。特に、あたかも『そのような事は起こっていない』と隠ぺい工作まがいな事をされれば尚更だ。
つまり、様子がおかしい事に気が付いたのは偶然だった。一つの不穏な点から皮切りに、日頃の様子からもそういえば違和感があるかもしれないと。
きっかけは単純。たまたま鬼柳が真夜中に外出する所を目撃した。その日は不思議に思ったが特に深入りしなかった。次の日鬼柳は通常通り朝から居た。 しかしその後も真夜中に鬼柳が外出する日が何度もあった。あの日たまたまではない……不定期で継続して外出している。
個人的な事に首を突っ込む事は好ましくない。引っかかるが放置しても良いと思っていた件だ。だが、少なからずその間睡眠をとっていないと仮定できる……朝から通常の行動をしているのに、だ。健康面で支障は無いのだろうか。そういえばたまに顔色を悪そうにしている時があるが……これが影響しているのではないか。そう思うと警告くらいはしておきたい。待ち伏せなどとあまり気の進まない行為をしているのはそんな経緯だ。

「朝帰りとは良い御身分だな」
「……っ!」

朝方帰ってきた鬼柳と廊下で鉢合わせた。鬼柳は心底驚いていたが、その表情には怯えと諦めも入り混じっている。バレない自信などは最初からなかったのだろう。問い詰められる……そう思ってその頭に沢山の言い訳を作り上げているに違いない。だがそもそもこちらに質問の意志などない。

「多くは何も訊かん。話したいのならば別だがな。ただ、ほどほどにしておけ。お前はリーダーなのだからな」
「…………お前らしいな」

鬼柳は困ったように頭を掻きながらどう対応すべきかに思考を移しているようだった。少し俯いて考えて、苦笑にも近い笑みを浮かべた。

「どーしてもって時になったら……お前に相談させて貰うわ。今は平気だ……悪いな」
「……そうか」

きっとそんな日は来ないだろう。そう思いながらも話を切り上げる。
何でも一人で考えて悩んで行動する、そんな男が……言葉だけでも、名指しで相談の予約をしてきた事に少し安堵を覚えた。




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