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■添い寝
「よぉクロウ! 何だ眠れないのか? 仕方ねぇなぁリーダー直々に子守唄でも歌ってやるよ!」
「ノックくらいしやがれ馬鹿リーダー!!」
ベッドに腰をかけていた所へ枕片手に鬼柳がやってきたので、傍にあった枕を投げ付けた。鬼柳はそれを軽々受け取ると、両手に枕を抱えてこっちへ早足で歩いてくる。
「普段良い子にしてるクロウへのご褒美だ。一緒に寝てやってもいいぜ」
言うが早いが鬼柳はこちらが腰をかけている事なんてお構い無しにベッドへ潜り込んだ。素早く持参した枕を頭の下に置きつつ。
ここでいい加減な言葉に怒鳴って部屋から追い出すのは簡単だ。だがそれは選ばない。これは防衛戦を張った、鬼柳の心境を読み取れる言葉だからだ。何だかんだとわけのわからない言葉はカモフラージュにすぎない。真の目的はこうやって人の傍にいる事。何度かそんな事があってようやく見えた結論だが。
「…………何かあったか?」
壁に顔を向けている鬼柳を上から見て、その頭に手をやる。手触りの良い髪が重力に逆らわず流れた。
「さぁ……これといった事はなかったと思う……」
「そっか……」
そのまま鬼柳の髪を梳くように撫でた。結局、鬼柳がこうやって無駄口叩いてやってくる時はめげている時だ。普段何も考えてないようでややこしい事を考えているらしい。内容は聞かない。鬼柳から話してこないから聞かない。求められてるのは深く突っ込んで根掘り葉掘り聞く事じゃない。
何度か撫でていると鬼柳は猫のように目を細めた。可愛げの無い猫だが、放っておけない何かがあるから困る。
「普段良い子にしてるリーダーへのご褒美だ。一緒に寝てやってもいいぜ?」
顔を覗き込みながら冗談めいた口調で言う。鬼柳は仰向けになり、こちらにつられるように微笑を浮かべた。
「言っておくがオレは寝相が悪いぞ」
「んな事は知ってるっての」
鬼柳の額をぺしっと叩き、その箇所にキスしてやった。
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