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■居留守
あまり訪れた人間に対応するということはしたくない。他に誰かいるならば自分から動かない。他に誰かいなくても出たくは無い。
扉の前に訪問者がいる音が響く。面倒なので対応しない方法をとった。そのうち諦めて帰るだろう。
しかし。しばし静寂した後、あろうことか扉が開く音がした。
「!」
この展開は穏やかではない。こそ泥か何かか。どちらにしても返り討ちにしてくれる……玄関へ向かい歩く。そこで鉢合わせた人物は予想外だった……知っている顔だ。
「よぉ元気か? もしかして寝込んでたらどうしようかと思ったぜ。元気なら問題ないな。じゃ、オレは帰る」
「待て鬼柳!」
顔を合わせて早口に用件を告げ引き返そうとした訪問者の腕を掴んだ。相変わらず細い。
鬼柳は立ち止まり振り替える。半眼でこちらを見る。
「そもそも今誰もいないみたいだからなー。何の反応も無かったからなー」
「それはお前だと思わなくてだな……」
一応言い訳めいたことを口にしてみるが、鬼柳は全て分っていたのだろう。家から反応が無い。留守か居留守かの二択。家に鍵が掛かっていない。家に誰かいるが出なかった。この段階で家にいる人物を大方想像つけて進入。一応、何かしらの悪い出来事で出られなかった事も想定してはいたが、見事に予想通りの人物と鉢合わせた……そういうことだろう。
「本当かぁ? むしろ、オレだから居留守使ったんじゃないのか? 何せオレは疫病神だからなー」
棒読みにも近い、その口調。半眼はキープしたままだ。
「まだ根に持っているのか」
「別にそんなことねぇよー。事実だしな?」
唇を尖らせて文句を言い出す鬼柳。まるで子供だ。こんなに子供でやる事ハチャメチャで、それでも人が寄ってくる……天性の才能か。
「……」
「な、なんだよ……っん」
尖っていた唇に唇を重ねる。半眼だった目は見開かれ、徐々に目蓋を下ろしていく。
「お、お前…っとりあえずこうすればいいだろとか思ってんだろ…お前のそういうとこ嫌いだ」
「そうか。オレはお前のそういうところ嫌いじゃないがな」
鬼柳は肌の色が白いので頬が赤くなると良く目立つ。だんだん赤くなる様は見ていて面白い。
「っご、ごまかされねーぞ」
「いいから中に入れいつまで立ち話を続ける気だ」
腕を引き強制的に家へ招き入れた。
取扱い注意の札を貼っておきたいくらいのそれをソファに座らせると、もう一度唇を重ねた。
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