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■雪
「雪だなー」
心底嬉しそうに呟く幼馴染に苦笑に近い笑みを浮かべる。
「当たり前じゃないですか。むしろ雪がない方がめずらしいくらいです」
「そりゃそうなんだがな・・・雪だなー」
不規則に空から舞い降りる小さな雪は、地面に到達しても溶けることなく積もりゆく。
宙に手を差し伸べる。雪はすぐに色を無くし形状を変えた。
美しく、強く。そして脆い。
「・・・雪、だな」
ずっとずっと見てきた風景。
当たり前の風景。
「生まれ故郷はお嫌いですか?」
そうではないのだろう。
そうではないとわかっていながらかける言葉が他になかった。
・・・なかなか、言葉にならなかった。
相手から返答は無い。ただ、雪を眺めていた。
たとえ立場が変わったとしても、いつでも帰って来れば良い。
躊躇する理由は何もないのだから。
「故郷が人より多くあるなんて、贅沢だとは思いませんか?」
「・・・そう、だな・・・・・・俺は贅沢だな」
「ええ、贅沢ですよ」
白い雪はいつでも迎え入れてくれるだろう。
何が変わっても、変わらなく降りつづけるその姿で。
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