seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■以心伝心

この人はいつも、深い意味もなく唐突にとんでもないことを言い出したりする。
「なあガイラルディア。お前、俺が死んだら泣くか?」
何の前触れも無い。
ただ、自分はブウサギに餌をやっていて、この人は戸棚を漁っていた。
別に死期を予感したでもなく、誰かが死んだでもなく。
ただの思いつきでしかないのだ、この発言は。
「・・・人に何かを訊ねる時は自分から話すべきだと思いませんか?」
「お前、この前は質問に質問で返すのは失礼だとかなんだとか言ってなかったか・・・?」
ガイの反応がつまらないものだったのか、ピオニーは眉間に皺を寄せ唇を尖らせる。
しかしガイはしれっと返した。
「そうでしたっけ?」
「・・・まあ、いいがな・・・・・・で?人に訊ねる前に自分からってことは、俺が、お前が死んだとき泣くかってことだな」
ピオニーは頭に手をやり少し考える間をとる。
「・・・ま、泣くだろうな。心の中で。だがまあ泣かないだろう」
遠まわしな言い方にガイは一瞬理解できずきょとん顔になる。
それを違う意味に捉えたのか、ピオニーは笑顔でガイに後から抱きついた。
「なんだーガイラルディア。俺に泣いて欲しかったかー?」
「いえ、それは無いです」
即答。
ピオニーは不満そうにガイの肩に顎をのせて文句を言う。
「薄情な奴め。この俺が泣いてやらないこともないと言っているんだぞ」
自分から泣かないと言ったのにこっちが否定した途端に文句を言い出すピオニーにガイは苦笑した。
表面ではこんな態度をとっておきながら、実際理解しているのだ。
だから、その答えを言ったのにこの人は。
・・・直接言葉にしろってことか。
「・・・・・泣いてもらわなくて結構です。貴方が俺の為に泣くのなら・・・・・・・・おちおち成仏もできやしない」
自分が、大切な人の大切な笑顔を消していると思うと自然の道理に逆らってでも生きかえらなきゃならないなんて思うかもしれない。
自分のせいで他の人も大切にしているこの人の表情を奪っていると思うと死んでも死にきれない。
「なるほどな。じゃあ、今度はお前に答えてもらおうか」
やっぱり。最初からそう思っていることがわかっていたのだ、この人は。
もう既に満足げな表情をしたピオニーを見ながらガイは小さくため息をついた。
たぶんこれから言う自分の答えも、この人にはわかっているのだろう。
「貴方が死んでも泣きません」
貴方と同じように。
・・・そう、同じように。
実はこの問いかけがあった時点で答えは決まっていた。貴方と同じように、俺は泣かないと。
・・・結局、お互いに答えが見えていたと言う事か。
「貴方が望むのならば泣きますが・・・貴方はそれを望んでませんよね?」
「なかなか賢くなったなぁガイラルディア」
ピオニーはガイの頭を撫でる。
妙に恥かしくなってその手を静かにどかす。
「・・・・・・・陛下も、突然わけのわからない質問はやめてください・・・」
「何を言っている。コミュニケーションというものは大事だぞ」
「・・・じゃあせめてこの状態のキープをどうにかしてください・・・」
先ほどから腕の中で身動きが取れない状態。
しかしピオニーは解放するどころかさらに強く抱きしめた。
「何を言っている。スキンシップというものは大事だぞ」
「・・・・・・まったく、かないませんよ」
ガイはピオニーに体重をあずけた。
いずれ、こうやって触れていることも出来なくなるのだろう。
それが、お互いの死が原因であるのか、それ以外なのかはわからない。
だが、先に旅立った相手を笑顔で見送るためにも
後悔の無いように自分の気持ちを伝えておこう。



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