seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■すれ違い


「最近ガイラルディアが俺を避けるんだ・・・」
「ああ、ようやく嫌われましたか」
「・・・嫌われた・・・のか・・・・・・嫌われたか・・・・そうなのか・・・」
「おや、重症ですねぇ」
案の定城を抜け出したピオニーは案の定ジェイドの執務室にいた。
そしていつものようにジェイドの仕事の邪魔をしていたのだが、いつもとまったく違っていたのはそのテンションだった。
机に腕をついて顔を支える。そのままずぶずぶと沈んでいきそうなほどマイナスの空気を帯びていた。
長い間付き合ってきたが、ここまで本格的に凹んだ親友を見るのは初めてかもしれない。
これではからかうのすら少し気がひける。
「ふむ・・・本当に心当たりはないんですか?」
「無い・・・・・急に冷たくなった・・・この前なんて触れようとしたら盛大に避けられた・・・」
語る言葉にも覇気が無い。
これは本格的に避けられているのだろう。
「それはいつ頃からですか?」
「たしか・・・三日くらい前だったか・・・はぁ・・・」
「そうですか・・・では陛下。この書類に判を押してください」
「・・・お前・・・・俺の話聞いてたか・・・?」
「ええ、聞いてましたよ。私から理由を聞いてみましょう。ま、私に話してくれるのならですけどね」
ジェイドは書類をまとめると立ちあがり、ピオニーも立ちあがらせた。
「本当だろうな・・・」
「疑い深いですねー・・・」
ジェイドは首をすくめた。



今日の仕事を終えたガイは暗いグランコクマを1人歩いて屋敷に戻る。
「(明日も・・・びっちり予定が入っちまってるな・・・)」
小さくため息をつくとガイは屋敷の扉を開いた。
「お帰りなさーいガイラルディア様」
「・・・・・・・・・・・・・」
謀らずして思いっきり嫌な顔になったのは言うまでも無い。
何故この人がここにいるのか。何しにきたのか。
「まあ冗談はさておき。何故私がここにいるのか心当たりはありますか、ガイ」
「いや・・・まったくないな・・・」
「そうですか?じゃあまあ立ち話もあれなんで中に入りましょうか」
ジェイドは中に引っ張ろうとしてガイの腕をつかむ。
「!」
「ここはお前さんの家じゃないっての・・・ん?どうかしたか?」
急に真顔を作ったジェイドに気付き、ガイは疑問符を浮かべた。
「いえ、中で話しましょう・・・・・・・・・安静にしている状態で」
ガイは目を丸くする。が、すぐに小さくため息をついた。
「・・・やっぱり気付いたか」
「38.7度ってところでしょうか」
ピオニーの証言から大方の予測はついていたが、実際に触れてみて確信する。
突然避け始めた、となると一番考えられるのは隠し事。
そして触れられることを嫌がったのにも何か理由があるはず。
「顔には出ないからな・・・少し違和感があるだけで、体調が優れないってほどでもないんだ・・・」
「だからといって高熱を放置するのはいただけませんねぇ。それに、心配かけさせまいとした振るまいだったのでしょうが・・・逆効果でしたよ?」
誰に、とは言わずに。
あえてそこをはずしたところに普段ならなんらかの突っ込みか愚痴が返って来るところなのだが、普通に返答したのは熱のせいか、その「誰」が気がかりなせいか。
「・・・何か言ってたのか?」
「ええ。ガイラルディアが俺を避けるんだ~っていじけてましたよー。完全に嫌われたと思ってるみたいですね」
「・・・・・・」
ガイは黙り込む。
落ち込んでる様子のガイにジェイドはやれやれと首を振った。
「貴方まで落ち込んでどうするんですか。まったく、世話の焼けるカップルですねぇ」
「だ、誰がカップル・・・ん・・・っ!?」
顔が上げられたガイの唇に素早く唇を重ねる。
無理矢理こじ開けると口に仕込んでいた液体を流し込むとガイを解放した。
突然流れてきた液体にガイは咳き込む。
「な・・・何を・・・」
「ただの風邪薬ですよ。気にしないで下さい」
何事もなかったかのようにジェイドはしれっという。
「・・・・・・・・・・・・本当にただの風邪薬か?」
「やれやれ。信用ないですねー。今日安静に寝ていれば明日にでも下がるでしょう。どうせいままで薬も飲まずにいたのでしょう?それでは治るものも治りません」
まったくもってその通りなのでガイは返す言葉も無い。
「念の為数回分の薬を置いていきます。ま、寝るのが第一ですからね。お邪魔になりそうなので私はこれで退散しますよ」
早々と部屋を立ち去ろうとするジェイドを、ガイは慌ててひきとめる。
「あ、ジェイド・・・」
「なんでしょう?」
「あ・・・・ありがとう・・・・」
素直に謝られてジェイドは目を丸くするが、すぐにいつもの笑みを浮かべなおす。
「いえいえ。こちらこそご馳走様でした」
一瞬なんのことだかわからずにきょとんとするが、すぐに気がついて顔を赤くしはじめる。
ジェイドは反論が返ってこないうちに部屋を後にした。
完全に暗くなっている外に出て、小さくため息をつく。
「まったく・・・貧乏籤もいいところですね・・・」
死霊使いが恋のキューピットとは馬鹿げた話どころの騒ぎではない。
しかも自分の想いを犠牲にしてまで2人をくっつけようとは。
「相手が幸せならそれでいい、ってやつですか?私もとんだお人よしですね・・・」
ジェイドは一度後を振り返り、小さく笑うと歩みを進めた。



朝起きてみると昨日までの高熱っぷりが嘘のように快調だった。
「(本当に風邪薬だったのか・・・)」
城の中を歩きながらガイは昨日のことを思い出した。
だったら無理矢理飲ませずとも良かったのに・・・思わず唇に手を持っていく。
「ガイラルディア・・・」
小さく声がして、ガイははっと思考を戻した。
目の前に困惑気味の陛下が立っていた。
「陛下。おはようございます」
「お、おはよう・・・」
完全に嫌われてると思ってるみたいですね・・・昨日の言葉を思い出した。
なるほど。そこも誤情報ではないようだ。
ガイはどうするべきか考えていると、向こうから声がかかる。
「な、なあガイラルディア・・・俺、何かお前にしたかな・・・」
「・・・・・・・・」
やっぱりそう思ってるようだ。
どう答えればいいだろう。素直に謝るか・・・全てを話すか・・・
「いやーギクシャクしてますねー」
突然第三者の声がして二人はビクリと体を震わせた。
「脅かすなジェイド・・・何のようだ。書類なら昨日渡しただろう」
「いえいえ。今日はガイの様子見に来ただけです。陛下を自分が嫌ってると思われていたことに相当落ち込んでましたからねぇ」
「そ、それは・・・」
「何・・・?じゃあ嫌ってるわけではないのか・・・?」
「き、嫌うわけないでしょう!・・・って・・・あ・・・い、いやその・・・」
思いきって否定しまったが、これではまるで。
ガイは急激に恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俯いた。
ポカンとしていたピオニーだったが、だんだん状況を把握すると顔に笑顔が戻る。
「・・・そうだよな。ガイラルディアが俺を嫌うわけがないよなー」
ぎゅう、とピオニーに抱きつかれる。
久しく触れてなかった気がする。たった数日なのに。
「まったく世話が焼けますね。それでは私はこれで」
「すまなかったなぁジェイド」
「本当ですね」
最後の最後まで貧乏籤。
唯一の報酬は。
「(・・・あれでは足りないくらいですね)」
もう少し長い間口付けをしても罰は当たらなかっただろうに。
「(まあ、また機会があれば・・・ということにでもしておきますか)」
小さな事件を解決させ、何事も無かったかのように日常は動き出す。



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