seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■古泉一樹の消失

「何らかの不確定分子から更なるノイズが発生した模様。原因不明。迅速に犠牲を最小限に抑える方法は」
長門の声がやけに冷たく感じた。そもそも俺はこの状況が良く飲み込めていない。こんな得体の知れないもの飲み込んでたまるものか。
俺達はまた異次元にいた。正確にはもっと違う言い方があるらしいのだが俺には「異次元」で十分だ。
ここにいるのは目に見えているだけで3人。俺と、長門と・・・
「古泉樹一樹の消滅。情報統合思念体の意思」
雑音だらけの空間であるはずなのに、その言葉は全てをかき消して俺の深いところへダイレクトに突き刺さる。
・・・古泉の、消滅?
「何・・・言って・・・」
「古泉一樹をこの世から消去する。それが現状回復への最短経路。そしてそれが情報統合思念体の意思」
よりわかりやすくなった言葉は突き刺さったナイフを更にグリグリといじられた感じだ。経験者が言うんだ間違いない。
その消去の対象である古泉一樹は俺達の目の前に立っている。
いつぞのカマドウマ事件で出現させたような赤球を持った状態で。
その表情はいつものようにいかなる女子をも虜にしてしまいそうなスマイル・・・・・・では、もちろんない。
表情筋をまったく使用していないその無表情から、何故か殺気だけは伝わってくる。
そう、俺と長門は今にも古泉に殺されそうな状況にあった。
この状況説明と解決策が先の長門の説明なのだが、俺にはどうしても喜べるものではなかった。状況も解決策もだ。
「他に方法はないのかよ・・・!おい古泉!そのわけわかんない赤い玉をしまえ!このままじゃうっかり殺されるぞおい!!」
「会話の成立は無理に等しい。情報統合思念体は古泉一樹の消滅を望んだ。それが最も有効な状況打破方法」
そんなことはわかってる。さっきから話かけてもうんともすんとも言わないからな。それどころか赤い玉を投げられて長門が止めるという流れがもう2ケタ到達するくらい行われている。
だからって殺すのか?古泉を。一応仲間ってカテゴリーに分類されてると思っているのは俺だけなのか?
長門は無表情で冷たい声を発している・・・・・・出会った当初ならそう思っていただろうな。俺も。
だが長門の発言はさっきから回りくどい。『情報統合思念体の意思』を淡々と繰り返しているだけだ。
「・・・お前は?お前は・・・どうしたいんだよ」
「私は・・・・」
もう数えるのも面倒になってきた爆発音が響く。古泉が投げた赤球は長門が張ったバリアのような見えない壁ではじかれた。
爆音にかき消されそうないつもの声量で長門は呟いた。
「貴方を救う方法をとりたい」
「・・・長門」
「貴方を救う為には・・・・・・古泉一樹を無傷で正気に戻すことが必要」
長門の瞳には、しっかりとした意思が宿っていた。




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