seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■冬至

「トラヴィストラヴィストラヴィス!!!!」
ドタバタバタンッ!と騒がしい音を立てて部屋へと入ってきたのは想像通りの人物だった。
ただ、その服装にさすがのトラヴィスも目を丸くする。
いや・・・服装と言えるかどうかも・・・
「・・・ジェレミー・・・なんだその格好・・・」
タオルを一枚腰に巻いた状態。まさにこれから風呂に入りますスタイルのジェレミーは慌てた様子でトラヴィスの腕を引っ張った。
「いいから!早く!早く!!」
ちなみに同じように引っ張られてきたのか、ジェレミーは反対の腕でトリスタンの手を引っ張っていた。
二人の腕をつかむとジェレミーは走って部屋を飛び出した。
こんなに走ってよくタオルが落ちないな・・・なんて冷静に思いながらトラヴィスが引っ張られていくと、ついた先はやはりと言うか、なんと言うか、風呂場だった。
「ゴホッ・・・ジェレミー・・・そろそろ離して・・・ゴホゴホッ」
そんなトリスタンの主張もむなしく結局ジェレミーは二人を浴室まで引っ張っていった。
「なあおい!すっげーだろこれ!!」
ようやく手を離して興奮するジェレミーの視線は浴槽に向いていた。
「ゴホッ・・・これは・・・」
広い湯船に浮かぶのは目に鮮やかな黄色い柑橘系の果物。
その香りが鼻を掠める。
「・・・すごい数のゆ」
「すっげーな!なんで風呂場にグレープフルーツが!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・ゴホッ・・・・・・・・・・」
「???どうしたんだよ」
脱力している二人にジェレミーはうれしそうな顔を保ったまま頭にクエスチョンマークを浮かべている。
トラヴィスが湯船に浮いている果物をひとつ手に取り、ジェレミーの顔に近づけた。
「・・・ジェレミー・・・これが、グレープフルーツか・・・・・?」
間近でそれを眺めて、匂いを嗅ぐと、ジェレミーは顔をしかめた。
「んー・・・言われてみれば匂いも違うしこんなにデコボコしてない気も・・・」
「ゴホゴホッ・・・これは柚子ですよ・・・」
「今日は冬至だ・・・」
手にしていた柚子をぽちゃんっ、と浴槽に戻すとトラヴィスは呟く。
今回の単語はトリスタンも知らなかったようで首をひねった。
「とうじ・・・ですか・・・ゴホッ」
「なんだよそれ」
トリスタンが知らなかったことをジェレミーが知っているわけもなく興味津々首を伸ばす。
トラヴィスはよくこんなに柚子が用意できたな・・・と関心しながら柚子を眺め、そのまま解説する。
「冬至とは・・・古代の遠い国で作られた二十四節気という季節区分法のひとつだ・・・太陽の黄経が270度に達して、冬至線の上に直射するときが冬至だな。この日は一年の中で太陽の高さがもっとも低くなる日・・・・」
言葉の途中でトラヴィスは二人の様子をちらりと見ると、なるほどと関心しているトリスタンと放心状態のジェレミーが目に入った。
トラヴィスは心の中でため息をついて、後者に合わせて言葉を選んだ。
「・・・まあ、冬の特別なイベントだ・・・・」
「おぉ!なるほどなー!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
トラヴィスは眉をひそめた。
これが・・・5歳年上・・・・
そんなトラヴィスの心情を察したのか、トリスタンは話をそらして話題を振った。
「ゴホゴホッ・・・そ、それで・・・・その冬至とこの柚子にどのような関係が?」
「ああ・・・その日は無病息災を願って柚子湯・・・柚子の入った風呂に入る風習があるんだ・・・遠い国では」
「へぇー!じゃあそのイベントを知っててタイスケさんは・・・」
「ああ・・・教えた時に風呂に関する行事だからって張り切ってたな・・・」
お前が教えたのかよ。とジェレミーとトリスタンは心の中で突っ込みをいれた。
「しかし・・・ゴホッ・・・柚子湯に入れば健康になるんですか・・・?」
健康について絡んでいるとなるとなかなか興味があるらしい。
トリスタンは少し気になったようにトラヴィスに訊ねた。
「そういわれてる・・・まあ根拠がないわけでもない・・・柚子に含まれてる芳香成分には新陳代謝を活発にして血管を拡張させて血行を促進をするものや、鎮痛・殺菌作用があるものなどが含まれているからな・・・」
「なるほど・・・ゴホッ」
「じゃあ入ろうぜ!三人で」
冬至云々を大して理解していないジェレミーが一番入りきって片腕を上げた。
既に一人だけ入浴スタイルなのである。
急いで引っ張られてきた二人は服を着たままだった。
二人は顔を見合わせる。
「・・・・どうする・・・風呂にはまだ時間的に早い・・・」
「ゴホッ・・・まあ・・・・・言っても聞かないでしょうし・・・・」
「それもそうだ・・・・」
三人は無病息災を祈って・・・・かどうかは微妙だが仲良く柚子湯を堪能して異国の行事を行うのだった。


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