seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■室外のち室内(室内)

視線を一応書類におちているが、文字の羅列を目で追ってもその内容がなかなか頭にはいってこない。
集中しようとすればするほどズキズキと鈍い痛みが足元から這い上がってきているようで。
放っておけばなおるかと思っていた昼間の捻挫が今になって厄介に感じる。
アルベルトは目を閉じた。
視覚を失うと触覚が研ぎ澄まされたようで眉をひそめる。
なんとか楽にならないかとそのまま机に突っ伏した。
しかしやはり余計にその痛みは侵食していく。
数時間の回避はできないものか・・・ぼんやりと机にぶせたままアルベルトが考えていると首筋に冷たい気配がした。
机にふせたまま思わず目を開く。それが、鋭利な刃物であるくらい見なくても感じる。
そして、それと同時にその刃物を所持しているものの顔も浮かぶ。
「・・・ユーバー・・・」
ピタリと首にあてられているために顔を上げることができない。
くぐもり声になったが、悪鬼には聞こえたようで、面白そうににやりと笑った顔が安易に想像できた。
「隙だらけだぞ。無用心だな、俺が暗殺者だったらどうすうつもりだった」
「・・・何の物音もたてずに背後に立つ芸当のできる人間などめったにいないだろう」
「ふん・・・」
刃物の気配が首から離れるとアルベルトは上半身をあげ、ゆっくりと振り返る。
直接この部屋に転移したであろうユーバーが愛用の剣をしまっているのが目に入る。
狩りを終えた帰りのはずだが、その割には戻りが早い上に返り血をかぶっていない。
ユーバーもアルベルトに視線を落とすと、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに唇の端をつりあげて微笑を浮かべる。
「相当こたえてるとみえる」
「・・・・・・・・・なぜそう思う」
「今にも倒れそうな顔色をしているからだろう。寝なくていいのか?」
人外が心配するほどひどい顔をしているのか・・・
アルベルトは口に手をあててため息をつく。
「・・・明日までに終わらせたい書類がある」
「そんなもの、明日でも間に合うだろう」
仁王立ちで答えるユーバーにアルベルトはげんなりする。
・・・・・・急ぎの書類は無い。ただ明日までには終わるだろうと思っていたものなのでその通りに運びたいだけだ。
しかしそういわれるとなんだか気が抜けてしまった。こうなるこなど予測もしていないのであろうが。
まあ普段ならこう簡単におれることはないのだであるが、相当まいっていた。
「そう、だな・・・・・・」
いいながらアルベルトは椅子から立ち上がろうと足に重心をかける。といままで一定のリズムを保っていた痛みがくずれ、比べられないほどの衝撃が走った。
なんとか、顔だけは表情をかえることなく、アルベルトは立ちあがることができず、また椅子に体重をあずけるのだった。
「やはり・・・・・・ここにある書類だけでも・・・・・・」
「クク・・・・・・」
ユーバーは喉の奥で笑うと、ガバッとアルベルトのを肩に担いだ。
突然の衝撃と視界の変化にさすがのアルベルトも無表情を崩す。
「ユ、ユーバー!?」
「なんだ、思ったりも重いな」
言った割には大して気にも止めず、ユーバーはそのまま片手でアルベルトを支え、部屋の端にあるベッドまで歩くと乱暴にアルベルトをおろした。
乱暴、といっても多少怪我人であることを考慮しているのか重心をかけたときのような大きな衝撃は襲ってこなかった。
「・・・なんのつもりだ」
「歩けないのだろう?」
「!」
見透かされているその言葉に表情を変えてしまい、アルベルトはしまった、と慌てて表情を隠そうとしたがもう遅い。
ユーバーは面白そうにこちらの様子を眺めていた。
確実に相手のほうが優勢であることに、アルベルトは思いっきり嫌な顔をした。
「・・・・・・楽しそうだな」
「楽しいぞ?普段無駄に余裕たっぷりのお前が弱っている姿は」
本当に楽しそうに言うから反論する気も失せる。
アルベルトは片手で頭を支えると盛大なため息をついた。
「お前の趣味にはついていけない」
「ついてくる気もないのだろう」
ユーバーは言いながら屈み、アルベルトの片足の靴を脱がせる。
それは確実に捻挫している方の足であり、この嬉しそうに人を斬る悪鬼が、人の怪我の具合の確認をするとはやや不釣合いに感じた。
そんなアルベルトの心情など知らずに作業するユーバーの手がぴたりと止まる。
「・・・・・・・・・おい」
「なんだ」
「あれから何もしていないのか」
昼間怪我をしてからいままで、手当ても何もしなかったのか。
そう脳内で変換するとアルベルトはあっさり返事をする。
「ああ。あの書類が片付いたら適当にやろうかと・・・」
「貴様は馬鹿か。すごい腫れだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
たしかにここまで酷くなることが予測できなかったのだが、ストレートに馬鹿と言われると癪である。
無言で不機嫌顔をしている間もユーバーはてきぱきとその足を手当てしていく。
まさかこの人外が怪我の手当てなんて芸当ができるとは。
作業はあっと言う間に終わり、ユーバーは満足そうに手当てした箇所を見る。
「こんなところか」
「・・・一応・・・・・・礼を言うべきか」
「・・・・貴様がか・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・借りとして後日返すことにしよう」
あまりにユーバーが疑わしそうな、不思議そうな顔をするので、アルベルトは礼を言う気が失せた。
そこまでらしくなかったか。そもそも普段通りの発言ができているのか。
アルベルトは馬鹿馬鹿しくなってため息をつく。
「・・・もう寝る。朝になったら起こせ」
「何故俺が」
「自力で起きる自信がないのでね」
一度寝てしまえば何をする気もおきず睡魔にやられっぱなしになってしまうからこそ、寝る前に全て終わらせたかったのだが・・・もう、いい。
「・・・それは俺にメリットがあることか?」
「ユーバー、電気を消してくれ」
「おい・・・・・っ」
無視するアルベルトに反論しようとしたユーバーの唇は、その反論しようとした相手の唇で塞がれる。
触れる程度の、軽いキスではあるが。
「おやすみ」
そこに滅多に見せない笑顔が乗れば格別である。
あまりの出来事にユーバーが硬直している間に、アルベルトは逃げるようにさっさと眠りにつく。
ユーバーが我に返った頃には既に規則正しい寝息がきこえていた。
「・・・・・・チッ・・・・・・これで借りを返したと思うなよ・・・」
生殺しの状態でおあずけを食らったユーバーは乱暴にベッドの横に座った。

朝がきたら、覚悟しておけ。
そんな不吉な心の声などきこえるはずもなく、アルベルトは穏やかな寝顔を浮かべるだけだった。


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