seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■連想

闇夜に浮かぶ月は綺麗だ、などとぼんやりと空を見上げる。
月にそんなことを言っても月は微動だにしない。リアクションなどかえってくるわけもない。
あの金色が流れるように動けば、その印象はかわるだろうか。
アルベルトはそう思うとふと視線を下に戻す。
流れる金色がそこにあった。
表情をかえない金色よりも、動き回る金色のほうがずっと綺麗だ。たとえそれがモンスターの大量殺戮をしているものでも。
ユーバーの狩りにアルベルトが付き合うなんてことは稀だ。普段、仕事か睡眠かの二択で生活をしているような彼が、珍しくその選択肢の中に夜風に当たりたいなどというものをなんとなく入れてみたらユーバーが外へ出るところだった。
別に行きたい場所もなかったのでそのままユーバーのあとについて、ふらふらと人気の無い森の中まできてしまった。
冷たい木に寄りかかって腕組みをし、ぼんやりとただ風景を見ているだけだった。帰ろうにも、途中転移を用いられてしまったのでここがどこだかわからない。彼の狩りが終わるまで待つほかなかった。
月を見上げるのにも飽きてユーバーに視線をうつしたアルベルトは、月と同様にぼんやりと狩りの様子をみていた。
よく、そう素早く動けるものだ。
自分は得意ではないにしろ、戦場に立つ身としてはたくさんの戦士を見てきた。
だが、これほど無駄なく素早い的確な動きをする人間がいただろうか。
いや・・・人間にそんなものがいるわけがない。彼は、人間ではないのだから。
こんな大量殺戮を眺めながら、アルベルトは綺麗だという感想を持つ。
闇に映える金色を、意識せずに目で追っていた。
・・・この金色の髪に、心を奪われているのだろうか。
そんな疑問がどこからか沸いてくると、アルベルトはゆっくりと首を横に振って、小さくため息をついた。
「何を1人で否定している?」
さきほどまで自分より大きな敵と戦っていたとは思えないように平然とした態度で、ユーバーは声をかけた。いつの間にか、辺りに生きたモンスターは見当たらなかった。
さすがに手際が良い。関心するのは心の中にし、アルベルトは無表情のままユーバーの問いかけに答える。
「・・・暇だったものでな。少し考え事を」
「ふん。早かったほうだろう?」
確かに一般人よりも敵を倒すスピードは早いし、ユーバーが普段狩りに出て帰ってくる時間よりも早い。しかし。
「・・・・・狩場を何度うつしたと思っている。いい加減宿に戻りたい」
「何を言う。まだまだこれから・・・・!?」
ユーバーは言葉を止めて急いで剣を構えるのと、アルベルトが気配を感じて振り向くのはほぼ同時だった。
巨大な翼竜が猛スピードで接近し、その鋭い爪がアルベルトの右腕を浅く裂いた。
一瞬遅れて、ユーバーが翼竜を剣で切り裂く。
翼竜の鮮血が、アルベルトの目の前で散る。
・・・綺麗な、赤。
一瞬、息が詰まった。
赤。
返り血を無抵抗に浴びながら、頭に過る弟の姿。
何故、獣なんかの血で弟を思い出さねばならないのだ。
その赤を・・・綺麗だと思った。
心を奪われる・・・?何に・・・?
自分が持ってない金色か、自分と同じ赤色か。
一体何に心惹かれている・・・・?一体何が・・・・
「おい、アルベルト!」
その声ではっ、とアルベルトは我に返った。
「ユーバー・・・」
「ユーバー、ではない。貴様、普段人の話を聞けと言っておきながら・・・」
ユーバーは露骨にいらいらした様子でアルベルトの右腕をつかむ。
「大丈夫か、と聞いている」
言われて初めてアルベルトは自分が怪我をしていることに気がついた。
そんなに深い傷ではないが、血が流れて地面にポタポタと落ちていた。それに気がつくを急に痛みを感じ、アルベルトは眉をひそめた。
「まあ・・・戻って手当てをしたほうがいいだろう・・・」
「一応人並みの痛覚は持ち合わせているのだな」
「生憎生まれたときから現在に至るまで人間なのでね」
自分の腕から流れ落ちる赤を見つめ、アルベルトの脳裏に浮かぶ赤毛の弟。
・・・いっそ、ヘモグロビンが緑の色素でも持っていれば良いのに。そう思った。
無表情で自分の傷を眺めているアルベルトに、ユーバーは不審そうに眉間に皺をよせる。
「どうかしたのか?」
「・・・・・・いや・・・・・・」
「・・・・・ふん」
これ以上待ってもアルベルトは何も言わないだろう。ユーバーは転移魔法を使い宿へと戻るのだった。
地面の歪みを確認し、顔を上げると綺麗な金色。
少なからずこれに惹かれているのは事実だ。事実なのだ。
だが、赤をみると思い出す大切な存在があるのもまた事実。

この心を惹きつけているのは、何色なのだろうか。


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