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■退屈
にらめっこ。
・・・視線に耐える、という点ではそれにあてはまるかもしれないが、にらめっこにしては状況が違い過ぎている。
どちらも面白い顔どころか無表情。そもそも視線が一方通行でさらに睨んではいない。決定的に違う。
そう、あえていうならば我慢比べ、といったところだろうか。
どちらが先に声をかけるか。
相手の視線を感じながらも本から視線をかえずに、クルガンは分析した。
だが、我慢比べだといってもそれはこちらが勝手に思っていることだし、どちらから話しかけても似たような展開に流れていくのは簡単に想像がついた。
それでもこちらから声をかけたくないのは何故だか感じてしまう敗北感を避けるためか否か。
そんなことを考えているうちに、我慢強い方とはいえない相手方のシードはクルガンに声をかけた。
「なぁ」
「なんだ?」
「面白いか?」
主語が無いかわりにシードは本に視線をむけて言った。
「私は、面白い」
「俺は、つまらない」
きっぱりシードが口にしたのがスイッチだった。
シードは無表情だった顔にあからさまに『暇』というオーラをのせて、クルガンに体重を預けながら文句を言った。
「暇なんだよ今日はよー。なんでこんな暢気に休日とか過ごしてるんだよ。おかしいだろ時期的に」
「そう言うな。上の命令なんだからな」
ここまで流れが変わってもクルガンは本から視線を上げなかった。
シードはムスッと不機嫌顔で腕を組む。
「何か面白いこと言えよ」
「お前は秀才だな」
「・・・・・・ムカツク」
「お前が面白いこと言えと言ったんだろう」
「面白くねーよ!」
「では何が面白いんだ」
「あーん・・・?」
言われてシードは考える。
これでしばらく静かになるか・・・そう思いクルガンは本の文章を読み始めるが、2行も読めなかった。
シードが本を除けて膝の上に向かい合う形で乗ってきたからだ。
「じゃあさ、『シード愛してる』って言えよ」
「・・・誰がそんな命令口調で言われて言うんだ」
「なんだよ、じゃあどうしたら言ってくれるんだよ」
ずいっ、とシードはクルガンに顔を近づけて言う。
クルガンは無表情のまま思考を巡らせていたがふいにシードの唇に自分の唇を重ねた。
シードが抵抗する間もなく、座っていたソファにシードを押し付け、覆い被さる形になるとようやく唇を離す。
「お前の反応次第だな」
「・・・・・・やっぱりムカツク」
頬を赤くしたシードは目をそらしながら呟いた。
暇がある幸せと、一人じゃない安心。退屈を感じない休日。
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