seepking indexへ text blog off link このぶつかり合い…格別だ!
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■不器用同士

嬉しそうに駆け足でシードがこの場に来たのは5分ほど前である。
シードの訪問自体はめずらしいことではないのだが、今日はいつもの訪問と違っていた。
そもそもシードは理由があっての訪問を滅多にしない。いつも「会うのに理由なんかねーだろ?」と当たり前のようにいわれ、前触れも無く訪れる。
だが今日は目的があってこの場に来たようだった。
「バンダナと大してかわらねーよ」
「いや・・・ものすごくかわるだろ」
フリックはシードの持ってきた箱の中身を見ながら眉をよせる。
箱の中には色とりどりのリボンが散乱していた。
リボン、といっても包装に使うものではく、いわゆる髪止めである。
もちろん女がつけるものであり、男とは無縁に近いもの。なのだが・・・
「フリック可愛いし、すっげー似合うと思うぜー」
邪気の無い笑顔でそんなことを言われても。
フリックはため息をついた。
「俺なんかよりも、お前の方が似合うと思うぞ・・・髪も俺より長いしな」
リボンから逃げる言い訳だが本心である。
シードはフリックの言葉を聞きながらリボンを見つめ何やら考えているようだったが「あ、そうだ!」と顔をあげて嬉々と提案する。
「じゃあさ、俺もコレつけるから、フリックもつけてくれよ。それならいいだろ?」
「そういうわけでも・・・・・・・・・・」
何とか断ろうとしたフリックだったが言葉をフェードアウトさせる。
シードは桃色で大きめの花をモチーフにしてある髪飾りを自分の手で自分の頭に乗せ、「いいだろ?」と上目遣いで聞いてくる。
・・・・・・・・・やっぱり似合ってる。
「・・・そうだな」
「ほんとか?つけてくれるのか?」
「ああ・・・ただし、お前が先だぞ」
「おう!!」
シードはさっそく箱から水玉模様が描かれている玉が二つついたゴムを取り出すと、自分の髪を片手で持てる程度持ち上げ、結おうとする。
結おうとゴムを持っている手を動かそうとすると髪を持っている手も動き、パラパラと手から滑り落ち、結う分の髪の毛がどんどん減っていく。
それに気づいて結う分の髪を追加するが、今度は結ばなくても良い部分の髪まで巻き込んで結ってしまったり・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
見事にこんがらがったシードの右側の髪の毛をフリックは哀れみを帯びた目で見つめた。
これははずすのも痛そうだ。
「・・・仕方ないだろー?自分で髪なんて結んだことないんだからよ・・・」
フリックの視線に気がついたシードは唇を尖らせて自分の結った部分を触りながら言った。
それでも今度は左側に取り掛かろうとしたシードに、フリックは思わず手が出た。
「ちょっと待て・・・・俺が結ってやる」
「フリックが・・・?」
しばし考えたのち、シードは自分がやっても結果は見えているのでおとなしくフリックにゴムを渡した。
フリックはサラサラとしたシードの赤毛を持ち、結おうとしてふと思い出した。
「(そういえば昔・・・オデッサの髪を結ってあげたことがあったな・・・・・・)」
同じようにサラサラの赤い髪を思い出しながらフリックはシードの髪を結った。
結い終わったのを確認すると、シードは手鏡で自分の頭を見る。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・すまん」
シードの無言の訴えにフリックは謝った。
そういえば、とフリックは思い出す。
オデッサの髪を結った後・・・・・・もう結わなくていいって呆れられたんだっけ・・・・・・
シードよりはマシ、以外に誉め言葉が見つからない出来だった。
「・・・一応俺結んだから今度フリックな」
「・・・・・・誰が結ぶんだ?」
「・・・・・・・・・」
二人は顔を見合わせまま黙りこくった。
その軽く重い雰囲気に、この場に合わない威勢の良い声が降りかかってきた。
「ようシード。そりゃ時代を先取ったファッションかぁ?」
「ビクトール」
「こんなものがはやる世界がどんな世界か見てみたいな」
フリックは頭に手を持っていきため息をついた。
「しっかしまあヒデェ頭だな・・・どっちがやったんだ?これ」
お互いがお互いを指差し合った。
時間差があってお互いに顔を見合わせる。
「「俺の方がマシだろ?」」
お互いがお互いに言った。
お互いに眉をひそめる。
一連の流れにビクトールはこらえる気も無く吹き出した。
「はっはっはっはっはっ、仲がいいなー、おまえら」
「ビクトールとフリックほどじゃねーよ」
「なっ・・・ん・・・!?」
シードがさらりと言った言葉にフリックは赤面した。
「まあそうだなー。昨日の夜のこいつといったら・・・」
「ビクトール!!!!!!」
フリックは赤い顔のままビクトールに怒鳴る。
そんな様子をビクトールは面白そうに眺め、口元を手で押さえ、クククッと笑った。
シードは首をかしげて、不思議そうな顔をしてフリックに言った。
「フリック、顔が赤いぞ?どうしたんだ?」
「お前がヘンなことを言うからだろ!!」
フリックに言われるがなんのことかさっぱりわかっていないシードはきょとんとした顔のまま、フリックからビクトールに視線を移した。
「俺、何かヘンなこと言ったっけ?」
「いーや、何も言ってないぜ?シードは本当のことを言っただけだもんなぁ?」
その問いかけの先はシードではなく、フリックに向けられている。フリックは何と言ったら良いかわからずに赤い顔をさらに赤くしてビクトールを睨みつけた。
しかしビクトールはまったく動じない。やっぱりフリックの様子をみて喜ぶだけだった。
「?まあいいか。じゃあ俺、髪の結い方教わって、うまくなったらまたくるから」
シードは箱を片付けながらフリックに告げる。フリックはそれに気がついてビクトールのことを強く睨むとシードの方を見た。
「帰るのか?」
「ああ。結えないんじゃ仕方がないしな・・・」
シードは残念そうに立ちあがった。
「しっかし髪の結い方なんて誰に教わるんだよ・・・んなことできるやつ周りにいるのかぁ?」
「んー?クルガンに教わるよ。いつも俺の髪結ってくれるし。んじゃーなー。また今度」
シードは手を振って立ち去った。
しかしそれに応えることなく残された二人は硬直した。
「クルガンに・・・・?」
「いつも・・・・・・・・・?」
二人は顔を見合わせる。
「・・・なるほどなぁ。器用だとそーゆープレイもできるってわけか」
「プレイって・・・何を言い出すんだお前は」
頬を朱く染めてフリックが視線をはずすと、ビクトールはにやりと笑い、ガバッと片手でフリックを持ち上げた。
「は・・・!?おい、ビクトール!なんのつもりだ!!!」
「いやー?ちょいとナイスなアイディアが浮かんだもんで実行しようかと思ってな」
「な・・・っ!!は、放せビクトール!!!」
脇に抱えられた状態のフリックが暴れたところでビクトールから逃れられるはずも無く。
二人は寝室に消えていったのだった・・・・・・


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